マミーを亡くしたばかりの身寄りの居ない青年はわずかに22歳。
厳しい祖母は言いました。
「お前は自分勝手な人間だから人の事を考え、人の為に生きろ。」

なんでこんな失意のどん底の時にそんな事を言われたのかは良く理解できまけんでした。
思えばマミーの彼氏と同居という最悪の日々を過ごして育った小中学時代…

言いたい事も言えずに、ただ下を向き笑顔も無い。

そんな卑屈な少年はいつの日か閉鎖的になる。

そんな青年がある時カスタムハーレーと言う世界に憧れる。

ただ、その時は全盛期。
憧れ、大好きなビルダーを訪ねた時に痺れるような言葉の数々、そしてその男は全て自分で通ってきた道だからこそ重みを持つセリフ。

今でも仲良くさせていただいている。

結婚して貯金どころからマイナスな日々、カスタムハーレーは鳴かず飛ばず…

いつの日か諦めた30歳。
娘が生まれた。

閉鎖的な僕は奥様の天真爛漫な性格に触発され、いつしか人を招く事を覚えた。

親でも、祖母でも変えられなかった自分をいとも簡単に変えてしまった女と男。

人の事を考えるとは？
人の為に生きるとは？

子供を持ち親になり、それでも自分の信じるカスタムという土俵へ登る。

勝算なんて無いし人から評価されたい訳でもない、ただ自分の好きな事を好きなだけやりたいだけ、今回ばかりはカスタムハーレーの時のように流行りだからではない。

誰もやってないからやるのでもない。
思い溢れる気持ちを止められないだけ。

東京で生まれ育ち、後輩が運び込んできたピストバイクに魅せられ気づけば1台目からカスタムペイントしたり、今でも変わらずにやっている。

そのうちに自転車自体も好きになり、挙句には香川県に魅せられ移住しカスタムショップまで開く始末。

少ないかもしれないが、お客様は遊びに自転車のオーダーにと足を運んでくれる。

相手の想い、僕のアイデアそこに笑顔が生まれたら幸い。

いつしか栓抜きも自転車も相手の事を考え、思いオーダーを受ける事に喜びを感じてる。

祖母が言ったセリフはきっと、人の為に生きてる僕が一番輝いて見えるからかもしれない。

その真意も分からないけど、確かに今、僕の喜びは皆の笑顔だ。

それだけは間違いない。

きっと僕の笑顔を見たくて男達もまた喜びを感じているのかもしれない。